鳥たちのいえ

もうひとつの山嶺(いただき)

「もうひとつの山嶺」という小文を谷口ジローは書いています。長編『神々の山嶺』(原作・夢枕獏)の単行本刊行時に書き下ろしたショート・ストーリーです。冬山の雪原で動物との邂逅を経て、語り手は「山」と向き合います。これは作品『神々の山嶺』に対する谷口自身による注釈のようでもあります。

谷口が描く「山」は単なる景色でもなければ、背景に留まっているわけでもありません。仮に「山」と呼んでいるそれは大きな「存在」なのです。

初期の短編から最晩年の作品に至るまで、谷口ジローは一貫して「山」を描いてきました。紙の上に描かれた「山」が発する言葉なき言葉は、何を語ろうとしているのでしょうか。

谷口ジロー  Jiro Taniguchi

1947年〜2017年。18歳まで鳥取で過ごす。その作品はヨーロッパ、アメリカ、アジア等で広く翻訳・出版され、内外の多くの漫画賞を受賞し、高く評価されている。また、『遥かな町へ』『歩くひと』『晴れゆく空』『孤独のグルメ』『神々の山嶺』『事件屋稼業』等、映画化、テレビ・ドラマ化、舞台化された作品も少なくない。

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